Google翻訳を有効に使う方法

1.背景と目的

○背景

機械学習の恩恵を強く受けている分野の一つは、翻訳です。つい数年前まで機械翻訳と言えば、まったく頓珍漢な誤訳ばかりを出力するというのが常識でした。それが今では、ほぼ9割がた読解可能な翻訳結果を出せるようになっています(私は同僚との英語メール、レポートの作成を行うとき、原案を機械翻訳に任せ、微修正のみ自分で行っています。その方が圧倒的に早く済むからです)。

・しかし、だからと言って闇雲に機械翻訳を使えばよい、というものでもありません。如何に進歩したといっても、機械翻訳が苦手なパターンというのはあります。

 

○目的

機械翻訳を「誰もが」うまく使う方法を紹介します。

 

2.総括

機械翻訳は、一度実施した英文を「逆変換」してチェックせよ

・日本語のこそあど言葉、オノマトペは「親切に」使うこと

・日本語の主語と述語ははっきりさせること

・日本語の時制はきちんとそろえること

 

3.各論

 ○題材

・ここでは、以下の文を英訳することを考えます。当然ながら、日本人の我々にとっては何の変哲もない文章です。

北海道産動物舎で過ごしているコノハズクが巣立ちをしました。

2018年8月16日にふ化した個体で、8月30日に1羽が巣立ちしました。

 2016年に繁殖した個体は、8月5日に巣立ちしていますので、ほぼ一ヶ月近く遅い巣立ちでした。

 ホワホワとした羽が特徴ですので、ぜひ探してみてください。

 ※旭山動物園ブログ 「旭山にゅーす・ぶろぐ」2018.9.2より

 ○和訳手順

①そのままGoogle翻訳に突っ込む

・とりあえずコピペ、翻訳した結果がこちらです。英語が得意でない人の場合、このままだと果たしてあっているのかどうかがよくわかりません。

Konohazuku spent in Hokkaido animal husband nested.

An individual hatched on August 16, 2018, 1 bird was nested on August 30.

Individuals breeding in 2016 were nested on August 5, so it was a late nest nearly a month.

Feather feathers are characteristic, so please try looking.

Google翻訳より 

 ②逆翻訳する

・さて、次が重要です。出力された英文を、再度日本語に逆翻訳してみましょう。

・赤字で表記した部分が特に変な部分で、翻訳にミスがあることが分かります。

 北海道の動物夫が入れ子にしたコノハズク。

2018年8月16日に孵化した個体は、1羽の鳥が8月30日に入れ子になった。

2016年に飼育された個体は8月5日にネストされたので、1ヵ月近くの遅い巣だった

羽の羽が特徴的ですので、見てみてください。

Google翻訳より

 ③誤訳部分の抽出、修正

・上の誤訳部分を見ると、翻訳できていないのは以下の3点です。

 -巣立ち、巣立つ

 -ほわほわ

 -主語と述語の消失、取り違え

・では、巣立ちという言葉だけを翻訳してみると…なるほど、nestだけでは巣立ちという意味にならないのですね。

巣立ち、巣立つ:Leaving (Leave) the nest

 ※Google翻訳より

 ・それから、ほわほわという単語。これは日本語ならではの問題ですが、ここに挙げたように感覚を音で表す言葉をオノマトペといいます。日本語はオノマトペがやたらと多いので、対応する英語がそもそも存在しないことがあります。ではどうするか? もっと一般的なオノマトペに変えればよいのです。

 ほわほわ→ふわふわ:fluffy

Google翻訳より

・そして3点目。日本語は主語や述語がしばしば省略され、また時制がかなりあやふやになります。前後の文脈を知っている人間であれば、無意識にこれらの情報を補足し理解することが出来ます。しかし、機械翻訳にそれをやらせるのはかなり無茶でしょう。ということで、原文の日本語にかけている主語と述語を補い、また時制を統一してやります。

 北海道産動物舎に住んでいた(過去形に変更)コノハズクが巣立ちをしました。

このコノハズクは(主語の補足)2018年8月16日にふ化した個体で、このうち(主語の補足)8月30日に1羽が巣立ちしました。

 2016年に繁殖した個体は、8月5日に巣立ちしました(過去形に変更)ので、今回はほぼ一ヶ月遅くなりました。

 ふわふわとした(オノマトペを簡単なものに変更)羽が特徴ですので、ぜひ探してみてください。

 

④修正+再チェック

・以上を修正し翻訳、再度逆翻訳した結果を示します。

Konohazuku who lived in the animal house of Hokkaido left the nest(この熟語は手動で入力).

This Konohazuku was an individual hatched on August 16, 2018, of which 1 bird left the nest on August 30.

Individuals breeding in 2016 left the nest on August 5, so this time it was almost a month later.

It is characterized by fluffy feathers, please try looking.

Google翻訳、日本語→英語

 

北海道の動物園に住んでいたコノハズクが巣を離れました。

このコノハズクは2018年8月16日に孵化した個体で、8月30日に1羽の鳥が巣を離れました。

2016年に繁殖した個体は8月5日に巣を去ったので、今回はほぼ1ヶ月後でした。

ふわふわの羽毛が特徴的ですので、見てみてください。

Google翻訳、英語→日本語

 ・いかがでしょう? 先ほどの文章に比べ、かなり可読性が増したと思います。個人的な感度としては、最終版の英文であれば「まあわかるな」という程度の文章にはなっています。勿論、同じパラグラフにleft the nestが3回も入ってるのはあまりかっこよくはないですが、そこまで求めるのは酷というものです(こうした所に気を使って英文をかける人は意外と少ない。英語を喋れる人であっても。)。

 

4.終わりに

Google翻訳うまく使うコツは実の所「日本語の書きかた」にかかっていると言っても過言ではありません。実際、ここで述べた修正手順のうち、英語の知識を使ったのは1か所のみです(leaveの過去形はleft)。つまり、学力や英語力によらずだれでも出来る技術なのです

・余談ですが、こうした日本語の書き方が出来るようになると、報告書の質が劇的に向上する、という副産物が生まれます。

機械翻訳をうまく使いこなすと、コミュニケーションの幅がぐっと広がります。是非挑戦してみてください。